みしょのねこごや

Diary - 2013年5月

憲法記念日によせて

自民党が憲法96条改正を公約にするのであれば,参院選では共産党に投票します。

論じる間もなく当たり前のことですが,時の政権の都合のいいように憲法改正がなされないよう,2/3 の特別多数が求められているわけですから,96条以外の改正についての国民の合意なしに,都合のいいように憲法改正をしたいという理由で 96 条を先にゆるめるというのは,異常を通り越して,危険というべきものです。

96条以外の部分を改正してから96条に着手するのが正常なありかたでしょう。


ちなみにそれ以外の部分の改正は基本的には賛成ですが,自民党の改憲案は憲法の意味を理解していない稚拙なものだったのでもっとなんとかしてほしいですね。

ある Togetter まとめへの comment

前書き

Internet を見ていたら,togetter【改憲問題】自民の石破茂「国民がどんな思想を持とうと自由だが,それは社会とは離れた所でやれ。公共の場に個人の思想を持ち出すな」というまとめが上がっていた。

そこにおいて@hiroujin 氏が 2013年5月11日のTBS時事放談で,自民党幹事長の石破茂氏は「国民が何を思い,どんな思想を持とうと自由かもしれないが,それは社会とは離れたところで願いたい。公共の場に個人の思想を持ち出されては困る」という旨の発言し,国民の思想や表現の自由を真っ向から否定しました。と書いてあった。

これが事実ならば大変なことだと感じたので,youtube に upload されていた動画から文字起こしをした。

時事放談 文字起こし

仙谷氏 (前略)あの,特に,この人権規定に対する制約条項を,これだけ雁字搦めつけてくるってのはですね,なんか,わりと,さっき申し上げた,世界人権宣言ですとかね,この,戦後の動きってのをあんまり,こう,自覚なさってないのかなぁと思いますねえ。

石破氏 いや,それはね。思想信条は自由に決まってんですよ。公の秩序を破壊することを『目的とした』。そんなことを目的にされてたまりますか。それは『目的とした』と書いてあるので,個人の思想信条を迫害しようとか,侵害しようとか,そのような荒唐無稽なことを考えているものではありません。

司会 具体的にはどういうことになります?そうすると。

石破氏 たとえて言えばね,こう,かつてオウム真理教ってありましたですよね。あれは間違いなく,民主主義では自分たちの思いは達成されない,と。しかし実際に実力でやろうとしても,それは警察にも敵わず自衛隊にも敵わず,そうであれば,こりゃテロだ!,って話だったんですよね。」あれは間違いなく,公の秩序を破壊することを『目的と』してやっているわけですよね。個人がどんな考え方をしようと,それは表現の自由ですよ。思想信条の自由ですよ。しかしそれを目的として,行動を起こされたり,集会をやられて,本当にそれを是とするか。私はしません。

思想・良心の自由(通称「思想・信条の自由」)について,現行憲法と自民党による改正草案。
日本国憲法
(第13条)すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。
(第19条)思想及び良心の自由は,これを侵してはならない。
(第21条第1項)集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
自民党改正憲法草案 http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/116666.html
(第12条)全て国民は,人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公益及び公の秩序に反しない限り,立法その他国政の上で,最大限に尊重されなければならない。
(第19条)思想及び良心の自由は,保障する。
(第21条第1項)集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,保障する。
(第21条第2項)前項の規定にかかわらず,公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い,並びにそれを目的として結社をすることは,認められない。
議論

元々の@hiroujin 氏の発言は,石破氏の発言を曲解・誇張した不適切なものであった。国民の思想や表現の自由を真っ向から否定したものではなく,特に(狭義の)表現の自由について石破氏は全く言及していない。広義の表現の自由は集会の自由を含むので,これについては言及しているが,否定するものではなく,制限するに過ぎない。

あとは,(広義の)表現の自由に対する改正憲法第21条第2項の制限をどう判断するか,という問題になる。これについては本稿の目的を逸脱するが,ついでに議論する。

まず,公益及び公の秩序を害することを目的とした活動は認められない,という部分。これは,石破氏の議論の通り,OK だ。是認する。このような行動は現行憲法においても公共の福祉 (SALVS POPVLI) から制限されていると解釈する。SALVS POPVLI を公益及び公の秩序で置き換える改正は,憲法の本質を書き換えるほどヤバくて絶対に容認できるものではないが,ここでは議論しない。

問題は それを目的として結社をすることはの部分であろう。ある結社があったとしよう。その結社が「公益及び公の秩序を害することを目的としている」かどうか,判断できるだろうか。答えは NO であり,実際に行動を起こさない限り判断できない。オウム真理教の例で言えば,sarin の製造計画を立ててしまえば,それは「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動」であるから認められない。しかしそれ以前の段階,つまり麻原氏が「国家を転覆させたい」と思っている段階では,「活動」は行っていないが,「目的として結社をしている」。しかしこれを制限するのは内心の自由の侵害になる。従って,この部分について,自民党の改憲草案は是認できるものではない。

もう少し単純に言う。Twitter などでオフ会をしたとしよう。すると公権力が入ってきて「参加者の一人が『国家を転覆させたい』と思っているからこの結社は認められない。」と言われ,解散させられる。自民党改憲草案では,この事例に対抗できない。現行憲法であれば,この段階では公共の福祉(=私人間の利害調整)に反していないので,この結社は認められる。

というわけで,石破氏の発言に立ち返れば,しかしそれを目的として,(中略),集会をやられて,本当にそれを是とするか。私はしません。の部分は,是認できない,問題のある発言である。

あとがき

これを書いているうちに,@hiroujin 氏も元動画を見て曲解・誇張に気づいたようで,と発言している。