みしょのねこごや

Diary - 2010年12月

久しぶりに長い日記を書いてみようと思います。最近みしょが考えていることをドバッと放出してしまうので,話題が多岐にわたるし脈絡もあまりないかもしれません。あと,わりと記憶に頼って書いているので,間違いがいくつかありそうです。反証できたら教えて下さい。まぁ日記だしいいんじゃないの的な。


今週の月曜日,福岡高裁で諫早湾干拓/開門についての控訴審判決がありました。問題となっている干拓事業は,そもそも戦後間もない時期に,稲作地を確保するために計画されました(長崎大干拓構想)が,その後1970年代になって目的が「畑作地の確保と防災」に変更されました。そして1986年には規模が縮小された新しい事業計画が決定され,1992年に着工して1997年に堤防が完成しました。その後,2002年に,海洋環境が悪化したと主張する漁業関係者が事業の中止を要求して佐賀地裁に訴訟を提起し,2008年に佐賀地裁が5年間の開門を要請する判決を下し,そして今週の月曜日に福岡高裁が国側の控訴を棄却しましたが,政府は上告を検討しており,問題は長引きそうです。

稲作を目的としていたのならば,米余りが顕在化して減反政策に踏み切った1970年代には計画を撤回してしかるべきですが,国は目的を変更して実施し,そして2度の判決を受けても方針を変えずに上告しようとしています。


ところで,僕らの周囲では,最近,科学・技術分野に対する予算が減少している,ということが話題となっています。いわゆる「学振」の採用結果が発表される時期だったり,予算案が決定する時期であったり,ということで,今一番アツい話題です。今年の「学振」は,博士課程の学生を対象とした DC 枠が昨年比3割減である上,博士研究者を対象とした PD 枠が文科省の判断で「元気な日本復活特別枠」に回されたために,内定者の発表を当初予定していたよりも2ヶ月程度遅らせるという自体になっている,しかも政府による判定結果が C 判定だったために PD 枠がどれだけ確保できるか不透明,といった破滅的な形相を呈しているので,(業界の中には)深刻視している人が多く,はてなブックマーク界隈でも多くの(業界関係者による)意見を見ることが出来ます。

「元気な日本復活特別枠」の予算は本来は1.3兆円だったはずですが, B 判定だけでその予算枠に匹敵する規模となっているので, A 判定と B 判定を全て実施するだけで枠を超過してしまいます。( A 判定の多くは2010年度補正予算で概ね実施されている。)ってことで,政府は枠を2兆円に拡大しようとしているようです。

そういえば,政府が年金の国庫負担分を本来の36.5%ではなく50%に据え置き,その財源として鉄運機構の剰余金だとか外貨/財投特会の運用益など「埋蔵金」を充てるという方針を決定しました。2011年はいいとして,2012年はどうするつもりなんでしょうか。子供手当も3歳以下を2万円規模にするんでしたっけ。あと高校無償化?そんで配偶者控除の削減は見送りでしたっけ。


うちの研究室では,最近,談話室として利用している部屋を片付けよう,とする動きが一部で起こっています。基本的に物が多くて,5~7台程度の computer が24時間365日付けっぱなしになっているような部屋で,10年ぐらい前の TeX( LaTeX じゃない!)とか Ruby の本,あるいは数世代前の version の MAPLE の本があったり,誰のものかわからない小説やマンガもありました。あと, MONOPOLY や麻雀の道具,大量の LAN cable などもあったりします。めんどくさいので全部捨てちゃえばいいのに,と思うのですが,なかなかそうもいかず,形式上全員の承認を得たことにしないといけないようなので話はなかなか進みません。

数年前に物理学科の「学生控え室」という名のカビとゴミと腐敗で満ちた部屋を,5人ぐらいの有志で掃除したことがありました。異常な量のゴミを捨てた革命的な掃除だったのですが,放置されていた名前の書いていない「マグカップ」1個を捨ててしまったことについて文句を言っていた人が居る,と後から聞きました。


以前にちょっと気になって,日本の国家予算(とその中の国債額)を過去数十年に渡って調べたことがありました。詳細な結果は手元にないので見られないのですが,確か予算枠が「片対数でほぼ直線」になったはずです。その当時は,指数関数型の予算増加を実現するために国債が発行されてきた,ということを結論づけたと記憶しています。

そういえば,2002年頃に「郵政民営化」の動きがありましたね。小泉首相(当時)の強い実行力で郵政事業は民営化された,と思っているのですが,最近では民営化を見直す動きが出てきています。


大学生の就職状況が悪化しているようですね。来春卒業する大学生の就職率は半分ぐらいでしたっけ。そういえば4月に大学院に入学した友人が就職活動に励んでいますね。入学して半年しかたっていない段階で卒業後の進路を決めなければならない大学院生も大変ですが,1年半先の経営状況だとか人事状況を見越して採用活動をしなければいけない企業も大変です。しかも変な人を採用したくはないので,人事部は Internet stalking にも余念がありませんし,どこの会社も採用時には同じような「適性検査」を課しています。学生側も対抗して,適性検査を何度も受けることで出題 pattern を記憶し,あるいは Internet 上の検査であれば数人で協力して問題を解いたりするようです。一体何がしたいんでしょうか。

新聞の社説などでは就活の早期化を批判する向きも見られますが,その新聞社自体がそのような就活を実施しており,っていうか銀行・商社・マスコミと言えば『就活の professional 』が志望する業界として有名です。


それぞれの事象の是非について論じる気はありません。事業計画を中止するのであれば誰かに「責任」が降りかかります。畑作をしている人にとって開門は破滅的ですし,漁業への悪影響は高裁判決でも認められています。年金の財源が無いなら国民負担を求めるかしかありませんが,増税にも掛け金増額にも踏み切れないので埋蔵金でお茶を濁すほかないのです。選挙で惨敗したときの責任は深刻です。お金がないなら科学・技術といった国民の生活に直接関わらない分野への支出は減らさなければなりませんし,文科省も PD 枠の看板を付け替えて特別枠に移すぐらいの抵抗しかできないのでしょう。お気に入りのマグカップなのかもしれないし,誰か一人が読みたい本,いつか使うかも知れない LAN cable であれば,もし捨てたことを批判されたのならばそれ相応の責任が生まれます。使いたい人がすぐ使えるように24時間365日,本体も display も点けておかねばならないのかもしれません。 民営化に反対する組織票は惜しいですし,基本的に国民は「前年比○%増」を要求するので予算は指数的増加に帰結し,増税なしに穴を埋めるためには国債を発行するのがよいのでしょう。青田買いをしたいので就活は早期化せざるを得ませんし,採用した人が使えなかったり思想的に偏ってたりすると人事のクビが飛びます。責任回避のためには「適性検査ではいい成績だったのですが」あるいは「この適性検査はどこの会社もやってますので」みたいな理由があるとよいのでしょう。


何かを「切り捨てる」こと,「責任を恐れない」ことは難しいですが,捨てられない・leadership がないというのもカッコ悪い。最近はそんなことを考えています。