みしょのねこごや

Diary - 2010年3月

多項式の微分を一般の環の上の自由加群の準同型に拡張すると便利

学振の特別研究員にかかる税金などについて自分用まとめ

いよいよあと3日後に博士課程に進学し,同時に学振の特別研究員になってしまう。毎月20万円が奨励金として(国民の皆様の血税から)もらえるのだけど,では実質的な収入はどれくらいなのか,ということを考えねば日本国のように財政が破綻してしまう気がしているのでまとめておく。というかこれからまとめる。

ただしみしょは残念ながらまだ独身なので,ここでは配偶者や子供などの扶養親族は居ないとする。

以下の値はみしょの試算なので,解釈や計算に誤りがある可能性があります。妄信しないで自分で計算しましょう。

国民健康保険料の計算に誤りがありました。近いうちに修正します。→修正しました。

所得税(国税)

税金については基本的に所得税法に書いてるし,国税庁タックスアンサーも非常にわかりやすいのでこれで調べればよい。

奨励金は,基本的に俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与税法28(2)なので,給与所得に該当する。事業所得だと強弁して領収書をかき集めて経費と相殺して所得額を減らす,みたいな技はもちろんあるけど,それはここでは触れない。(ちなみに,学振特別研究員の手引きのP.33に,奨励金は給与所得である旨書かれている。)給与収入を \(x\) 万円とすると, \(180\le x\le 360\) ならば給与所得額は \(0.7x-18\) 万円である(事業所得にかかる必要経費の代わりとしての給与所得控除)。特定支出控除は関係無いだろうから触れない。

もちろんこの他に収入がある場合にはそれも考えなければならない。株式にかかる配当所得と譲渡所得,外貨預金にかかる譲渡所得,その他teaching assistant(給与所得)や依頼出張の日当(雑所得)など。

で,それらの合計である総所得金額から,所得控除を減額することにより,課税される所得金額 \(y\) を得る。ちなみに総所得金額と合計所得金額は微妙に違うけど,基本的に合計所得金額の方が,額が大きい。

まず基礎控除38万円,それから社会保険料控除( \(=:p\) 万円)。生命保険料控除や雑損控除,医療費控除がある場合もあるだろうし,或いは研究遂行経費の取り扱いをすることにより \(x\le130\) となる場合には勤労学生控除27万円も付くかもしれない。

課税される所得金額 \(y\) が分かれば,所得税の税額もわかる。 \(y\le195\) の時には税額 \(T\) は \(T=0.05y\) 万円である。

住民税(地方税)

地方税は住んでいる地域によって違うので,それぞれの住む地方自治体のweb pageなどで調べなければならない。東京都23区に住んでいる場合には東京都主税局のQ&Aに書いてる。ここでは23区に住んでいるとして計算する。

住民税は所得割・均等割・利子割・配当割・株式等譲渡所得割があるが,最後の3つは(株・外貨取引をしていなければ)あまり意識する必要は無い。

まず,同様に課税される所得金額 \(y'\) を計算する。所得額は国税と大体同じようだけれども,所得控除の額が若干違う。基礎控除が33万円,勤労学生控除が26万円だ。ちなみに勤労学生の定義は国税の時と同じ。地方税法314の2(7)

で, \(y'\ge35\) ならば,均等割4000円と,所得割 \(0.1y'\) 万円を払わねばならない。

結局,地方税額 \(T'\) は \(T'=0.4+0.1y'\) 万円となる。

国民健康保険

特別研究員は日本学術振興会との雇用関係にはない。一方で比較的所得金額が高いので,大抵の健康保険組合では扶養家族とは認められず,両親の被扶養者として健康保険に加入することはできない。例えば僕の父親の組合では,年額130万円以上ならば扶養親族とは認められず,更に基準月額(108,334円)を上回る月が3か月を超えて継続することが分かっている場合については,「雇用」された日から認定取消となる。

というわけで,結局のところ,4月1日から国民健康保険に加入しなければならない。国民健康保険は年度単位なので,2010年度から加入することになる。

国民健康保険の保険料 \(S\) は国民健康保険ガイドに書いてある通り,住んでいる市区町村によって保険料は大きく異なり,よってここでは再び荒川区の場合を例に取る。保険料は荒川区のsiteの中に書いてあるとおり, \(S=0.94T'+3.72\) 万円である。ただし年度の途中から加入する場合は月割りで計算し,また健康保険に中断がある場合には時効の許す2年間の保険料は遡及する。

国民年金

最後に国民年金を忘れてはならない。

国民年金 \(R\) は日本年金機構の所管なので,そこを見ればよい。平成21年度はまとめて前納すれば172,230円で,22年は保険料が上がるので多分177,570円ぐらいだろう。

学費

ついでに学費も書いておく。東京大学の博士課程の授業料 \(K\) は年間520,800円。ただし減免申請をすればこの限りではない。

結論/今後のsimulation

以上を元に,今後数年間の収入を計算してみよう。ただしここでは研究遂行経費の取り扱いは適用しないものし,また前年(つまり2009年)に収入が無かった,と仮定する。収入額を \(I\) 万円,社会保険料額を \(P=R+S\) 万円,合計支出額を \(Z=T+T'+S+R+K\) とする。また0.1万円未満のハシタは真面目に考えていないので若干の誤差はある。

まず最初に,2010年1月から3月に全く収入が無い場合。

1年目(2010年)については,その前年に全く収入が無かったと仮定する,すなわち \(x_0=0\) とすると, \(y_1=y'_1=0\) 。故に \(T_1=T'_1=0\) であり, \(S_1=3.7\) , \(R_1=17.8\) , \(K_1=52.1\) 。結局, \(I_1=180, P_1=21.5, Z_1=73.6\) なので,106.4万円の収入。毎月11.8万円。

2年目(2011年)は \(x_1=180, p_1=21.5\) ゆえ \(y_2=0.7x-18-38-p_1=48.5\) で \(y'_2=0.7x-18-33-p_1=53.5\) 。故に \(T_2=2.4, T'_2=5.8\) および \(S_2=9.1\) , \(R_2=17.8\) であり,きっともうちょっと年金の支払いは増える。まぁそれは無視しよう。 \(I_2=240, P_2=26.9, Z_2=87.1\) で,152.9万円。毎月12.7万円。

3年目(2012年)は \(x_2=240, p_2=30.3\) ゆえ \(T_3=4.3, T'_3=9.4\) および \(S_3=12.2, R_3=17.6\) であり,ただし年金の支払いはもっと増える。 \(I_3=240, P_3=30.4, Z_3=96.1\) で,144.0万円。毎月12.0万円。

で,4年目の支出額は3年目の収入額で決まることに注意すると, \(T_4=4.1, T'_4=9.1, S_4=12.2, R_4=17.8\) で, \(Z_4=43.2\) ですね。

結局,ぜーんぶ合計すると,収入額は720万円,支出額は300.0万円ですから,月収11.7万円となるようです。もちろん, \(S_4, T_4\) はその後就職すれば若干安くなります。

おまけ

例えば年金を諦めると, \(Z=\{54.8, 73.9, 82.2, 29.4\}\) になり,4年間で241万円の支払いで,月収13.3万円。

学費が半額免除になると期待すると,支払額は更に78万円減り,月収15.3万円。

みしょの住宅費は毎月7万円なので,このあたりでやっと生活できそうになってきましたね。

もちろん,税制や社会保険制度は毎年どんどん変わって行っているので,この支払額ももっと増える可能性があります,というかどうせ絶対増えるからちゃんと節約しましょう!

まとめ

単位は万円。所得税・住民税は年限,国保・年金は年度限。

前年収入所得税住民税国保年金学費合計
2010年0003.717.852.173.6
2011年180.02.45.89.117.852.187.1
2012年240.04.39.412.617.852.196.1
2013年240.04.19.112.217.8043.2
合計(720.0)10.824.237.771.0156.2300.0

たとえば,年金を諦めると……

前年収入所得税住民税国保学費合計
2010年0003.752.173.6
2011年180.03.37.510.852.187.1
2012年240.05.011.014.152.196.1
2013年240.04.910.713.8043.2
合計(720.0)13.329.242.4156.2241.1