みしょのねこごや

Diary - 2017年11月

徒然草に,仁和寺に行くときには先達が居た方がよい,という話がある。

今回の仙台での10日間の滞在で,結果的に吉田類の行ったお店に 3 軒伺うことになり,しかしそれらのどのお店も満足できる(とりわけ石巻と文化横丁の店については珍しいくらい渋い)ものであった。

仁和寺の話について,当初は一般論だとしか思っていなかったけれど,そうではなくて,仁和寺に行くだけでも先達が居た方がよいのだから飲食店選びであればなおさらである,というように,仁和寺を底に敷いた形で理解する必要があったのだと思う。

何事も,先達はあらまほしきことであり,明日は仙台の最後に先達の勧める寿司を食べて新幹線に乗るつもり。

Italia のもろもろはわりとうまく行っていない,というか,予想通り,こちらから改めて催促してようやく「まだやってないけど待ってて」と言われるという最悪な状況なのだけれど,とりあえず仙台でわりと気晴らしができたし,とりあえず家も契約できそうだし,また Italia に戻ってやっていくのだろう。

しかしそれにしても,先達が居るというのは非常に大きくて,仙台には(先達がいるうちに)また来なければならないな,と考えている。

Appartamento の affitto の契約をした。最低 1 年は住まなければいけないという契約なので,最低 1 年間は Padova で暮らすことになった。


生活を始めるための活動を 2 ヶ月間(正確には 1.5 ヶ月だけど)いろいろやってきて,この街ではどうやって生きていけば良いのかというのがだいたい見えてきた。

たとえば前の街 חיפה では,街の人たちはだいたい気分屋でときどき無愛想だけども基本的には信頼してよい,不満があったらちゃんと勢いよく(日本人的には怒った感じで)主張しないと解決しない,郵便は届かないのでコネでなんとかするしかない,という生活だった。

一方この街では,どうやら人間を信頼してはいけないらしい。基本的には,任せてもやってくれないし,平気で嘘をつくし,というかたぶん嘘だとも思っていなくて知らないくせに適当に答えたりする。しかし,よくよく探すと,4 人に 1 人ぐらいの割合で,信頼できそうな人間が見つかる。そういう人を見出すことが,どうやらこの街では必要らしい。

生きる上でもう一つ大事なのは,細かいことを気にしてはいけない,という心構え。たとえば法手続き上は期限の定められているはずの書類も,実際には数日遅れても大丈夫だったりする。というかそもそも,期限が存在することすら知らなかったりする。これでどうやって世の中が回っているのかよく分からない。誰も何も気にしていないからうまく行っているのだろうか。それとも,世の中の 25% の,仕事のできる(というか仕事をする気のある)人たちが全てをうまくやっていってるのだろうか。謎が多い。


東北大学の人たちに研究発表の資料を送らないといけなくて,既に 4 週間ほど待たせている。10 月の始めに注文したはずの computer が未だに届いていないので,というか来月末になるらしいので,そのせいで滞っているのだ。というかそのせいで future collider についての研究を進めることができなくて困っているのだけれど,この国では(研究機関でさえ)だいたいがそんな調子で進むみたいで,もう完全に諦めてしまった。

仕方が無いので Windows の入った laptop を使おうにも,うっかり電源 cable を郵便で送ってしまったので,そして郵便は当然届かないので,というかいまその箱がどこにあるのか誰も知らないので,laptop すら使えない。

仕方が無いので電源 cable(の互換品)を Amazon で注文すると,電流の異なるものが届く。まあこれは ישראל でもそうで,そもそも通販では頼んだものが届くわけがないので,返送して払い戻してまた購入する。と,やっぱり同じものが届く。電流値が違う,と連絡をすると,電流が違っても動くから,と言われる。切りが無いのであきらめて 3.25A のものを使うことにする。そのせいで laptop の寿命が縮まないことを祈るしかない。

そんな感じで 4 週間が過ぎて,結果として資料を送るのが遅れてしまった。まあ Italia なので仕方が無い。


「仕方が無い」とか言ってられるのも,僕がそんなに仕事熱心ではなくて,とりあえず 2 年間 Italia で楽しく生きていけばいいなあと思っているからなんだと思う。もしも,たとえば tenure をどうしても取らなければいけなくてバリバリ仕事をしないといけない,みたいに追い詰められている感じだったら,この環境ではやっていけないように思う。Italia 暮らしを楽しもうと思えば,街には 1 euro の cappucino と patisserie があふれており,osteria に行けば 4 euro の glass wine が 30 種類ぐらい飲めたりするので,いくらでも楽しめそうだ。

いずれにせよ,信頼できる不動産仲介業者と,どうやら信頼できそうな Internet service provider のにいちゃんを見つけて,それから Appartamento の locatore もとても良い人っぽかったので,家と通信はなんとかなりそう。あとは自転車を買って,どこかに行ってしまった小包が見つかって,ついでに ישראל の銀行口座の解約が無事に住んで,それから来月末になるという computer が無事に来月末に届いて,そして 1 月に滞在許可証を受け取れば,やっと新生活の準備が完了する。


ちなみに l'italiano は嫌というほど喋っている。大学で LATINA をやっていた甲斐があった,というのもあるけれど,なにげに英語の etymology が役に立っている。研究所の秘書さんも英語がしゃべれなかったりするし,seminar やその他の案内も(トイレの張り紙も)すべて italiano なので,新しい言語をやるのが好きで無いとやっていけないんじゃないか,と思っている。

IKEA は甘えである,という点については議論の余地は無いと思う。どこの国に行っても IKEA があり,どの IKEA でも同じ,あるいはほぼ同じ商品を買える。地球規模で生活が均質化している。


申し込みから 5 日で Internet がやってきた。これは日本の So-net とかいうクソ会社の 11 倍ぐらい速い。例の信頼できる彼が「1 週間,早くて 5 日」と言ったのが正しかった。TIM は偉いし彼はすばらしい。

ところで大学の Internet が自宅の回線より遅いのはなんとかならないのだろうか……? USA にいる共同研究者との通話ができなくて困ったんだけど……。


新しい家の立ち上げ作業をしている。家の敷金を払った関係で,次の給料日までお金がないので,たまたま同じ階にいた日本人の同僚に 500 EURO ほど借りてなんとかしている。

昨日は IKEA (と他 2 件の大型量販店)に行ってきた。あまり IKEA に頼ると Italia らしい生活が出来ないんじゃないか,と思って,できるだけ控えようとしていたのだけれど,ישראל で使っていたのと同じ枕用 cover を見つけて,つい懐かしくなって買ってしまった。その cover と,あとはなぜかこの国では見つからないタコさん洗濯物干しは,ישראל で使っていて便利だったものたち。それ以外のものたちは初挑戦である,ということを以て,IKEA への甘えを少しでも正当化しようとしていた。

異国の地での新生活の中に少しだけ連続性が残されているというのは,わりと心を落ち着かせる。

今日は近所のお店に包丁たちを買いに行った。5 本組(包丁立て付き)で 40 EURO。パン用の knife が含まれており,こういうところが Italia っぽいな,と気に入っている。