南木佳士(小説)
南木佳士の小説が好きだ。滅多に小説を読まない僕だが,彼の作品はその殆どを読んでいる。
何故か。それはやはり,僕自身の「己の根」が,田舎の風景にあるからであろう。水田の脇を歩き,冬の畑で野球をし,夜空を見ながら登下校した,そういう風景。東京は空があまりに狭すぎる。地面があまりに固すぎる。
田舎で生まれ,上京して,再び田舎に戻った南木に,東京で「背伸びをして必死で演技している」僕は何か共鳴するものを感じているのか。
そういえば,最近僕は背伸びをしすぎているようだ。皆が背伸びをして歩いている東京で,そしてその中でも背伸びが必要不可欠である東京大学という街で,物理学という背伸びの学問を学んでいる,という異常さ。
この小説では,南木の死生観・人生観の変化を感じることが出来る。ウサギ・冬への順応・ダイヤモンドダストといった冬の作品には無い,秋の暖かみが感じられた。そしてこの変化が「海へ」へと繋がっていくのだろう。 とても心の温まる作品である。
読了。
2007/09/04 01:17:55
所有
南木佳士(随筆)
最近眠れない日々が続いている。別に不規則な生活を送っているわけではないのだが,とにかく眠れない。今日もそうだった。
仕方がないので,今朝Amazonから届いたばかりの南木の随筆を読む。50歳を超えた今,彼の言葉はどんどん静かになっていくのだけど,ここ数ヶ月憂鬱な気分でいる僕にはその静けさが丁度良い。冬物語のような話はあまり読む気にはならない。
随筆なんてのは,その人の身の回りのことしか書かれないのだから,この一冊が死の実感と山登りと猫の死とから出来ていても驚くことはない。それだけ静かなのだ。
Pizzaが焼けた。最近は殆ど運動していないので夜食はあまり食べないようにしているのだが,しかし食べることでしか自分の生を認識できないのだから仕方がない。
結局の所,人間の世界は狭いのだ。僕の世界は彼よりも狭いはずだが,しかし半ば諦めながら,僕は明日も昼頃起きて群論と場の量子論をやって,そしてStarbucksに行って寝るのだろう。それでいいとおもう。
2007年9月12日未明,不眠に悩まされながら読了。
2007/09/12 03:33:04
所有
南木の随筆。文庫版。
僕は,こういう文芸系の本に関して言うなら,hard coverの本よりは文庫本の方が好きだ。どうもhard coverだと,勉強している,という気になってしまう。逆に理系の本は文庫っぽくなってると嫌だ。
南木佳士の随筆に関する説明なんて,2日前に『からだのままに』に書いてしまった。2006年だろうが2007年だろうが,五十代半ばの著者の生活がそんなに大きく変わるわけがなく,だから本の内容も変わるはずがない。
でも少なくとも今の僕は彼の随筆を必要としている。
読了。2007年8月。
2007/09/14 20:18:53
所有
物理関係
Feynmanさーん(笑
読了。2006年10月。
2007/09/17 00:48:00
東京大学総合図書館
Feynmanといえば,原爆とあのdiagram。
2006年10月読了。
2007/09/17 00:50:27
東京大学総合図書館
その他
利枝子に自分を見ているような気がする。
読了。2007年5月。
2007/09/17 00:54:39
所有
とても良い物語。でも,これは所詮物語の話で,現実がこのようになっているはずがない。
即ち,モモや灰色の男達は現実には存在するけれども,Meister Horaは存在しない。
読了。2008年1月。
2008/01/23 20:11:23
東京大学駒場図書館
買った。よんでるとこ。
日本経済新聞2008年12月28日の書評より。小谷真理さんの推薦。「次元を超越して疾走するheroine」という言葉に惹かれて。
僕も長距離走は結構好きな方で,受験の頃にはだいぶ走っていたのだけど,東京では走る気が起きなくて最近はめっきり走ってない。そんな関連で読んでみた。
話の展開もとても魅力的で,図書館で借りてから2時間20分,引き込まれるように,特に最後の章は本当に「疾走」という感じで,読み終えてしまった。
『俺のことは,捜さないでくれないか』とかかっこいいなぁ……!!ゆってみたいなぁ!!村上はあまり好きじゃない性格だけど,端々がかっこいいよなぁ。
あと,走っている女の子ってかわいいと思う!!!絶対!!!!!
それにしても,物語の中で夏子は『Αριάδνη』に導かれた訳だけど,多分,生きていく上で「背中を押される」ことが必要になる場合って,結構あると思う。僕はそれほど他人と関わらない人なのだけれど,いずれにせよ僕も僕から背中を押されてここまで来たわけで。
Epilogueでのハカセの表情がとても印象的だった。
読了。2009年01月。
2009/01/13 21:10:29
文京区立図書館(目白台)
日本経済新聞2008年12月28日の書評より。文京区立図書館(根津)で予約して借りて読んだ。
『悼む人』と,その彼に出逢った人々の物語。生きる,死ぬ,弔う,悼むということについて。
人間の繋がりが希薄になった現代におけるある種の死生学。
それぞれがそれぞれの人生を生きているという点でもとても現代的な小説だと思う。
自分が死にそうになったときに,或いは自分の大切な人が死にそうになったときにもう一度読む。
僕の立ち位置と主人公とは大きく異なっているので,主人公はあまり好きではないし共感も出来ない。僕はむしろ朔也に近い。しかしだからこそ彼の周りの,巡子や,とりわけ倖世に共感を憶えた。
現代にきわめて適した,読む価値のある本。
読了。2009年6月。
2009/06/28 23:47:05
文京区立図書館(本駒込)