みしょのねこごや

Diary - 2017年12月

そういえばこの前書き忘れたのだけれど,10 月末からの東北大学の出張旅費が振り込まれていた。本来であれば(日本の未熟な税法161条8号,164条2項によって)航空券代などの経費まで源泉分離課税されてしまうところ,高橋さんとか事務の方の機転によって,無事に足が出ずに済んだ。

日本の大学にしては珍しく金払いが良かったので,ちゃんと書き残しておこうと思った。

たとえば seminar に行くにしても,自分から押しかける場合と呼ばれていく場合があって,後者だったら経費と日当を出してほしいものだけれど,日本の場合は招かれたとしても一円も貰えない場合が多くて,研究財源が貧しいと心まで貧しくなるんだなあと呆れたものでした。

給料日から 36 時間しか経ってないのに,残りの財産が EUR 1074 しか残っていない。まあ元々給料日前は借金をしていたのでそれほど驚くことではないんだけど。

それと引き換えに 家の中,とりわけ kitchen 周りが充実しつつある。TV も明日 (second hand のやつを)引き取りに行く。あと自転車も買いたかったのと,年末年始に旅行に行きたかったんだけど,それはどうやら厳しそうだ。まあ裁量労働なので,christmas と年末年始は平常通り仕事をして,1 月になってから雑にどっか行けば良いかなという気もしている。

というわけで kitchen が充実しつつあって,もともと 4 口 + forno という最高の環境なので,いろいろと作っている。例によって hatenablog でやってるので各位見に来てください。

いろいろやってます。

話は 12 月 8 日に遡るんですが,その日は金曜日で祝日だったので,近所の展示会場での Festival dell'Oriente という催し物に行ってきました。なんか東洋(っていうか多分 Asia 全部)のいろいろを紹介?するやつらしくて,日本っぽいのも色々ありました。海外で(private で)日本人とあまり関わりたくないので声はかけませんでした。Italia から日本はどう見えているのか,みたいな問題です。

地域ごとに場所が割り当てられていて,その関係かは知りませんが,南 Asia・東南 Asia の国々の会場はとにかく小物のお店(香辛料とか置物とか仏教関連とか)が並んでいて賑わっている(≒通り抜けにくい)感じでしたが,東 Asia は「展示」が多くてあまり賑わっていない印象がありました。もちろん sushi restaurant には行列が出来ていましたが,店員のほとんどは中国語を喋っているようでしたので,日本人はあまり参加していなかったのかもしれません。(そもそも Padova は小さい?街なのでわざわざ参加しなくても感はあるのかもしれない,Milano とかでやると賑わってると聞いたことがある。)

ちょうど訪れたときは和太鼓の演奏をやっていて,おそらく Italia 在住の日本人 2 人と Italia 人 1 人で 30 分ぐらい演奏していました。質がとても高かったので professional なのでしょう。太鼓は空間振動があるのでこういう会場では映えるし聞いていて楽しいし,かといってそういう陽だけではなく陰としての笛の演奏 (solo) も演目に入っていて,考えられている,日本文化をよく発信している集団だと感心しました。単なる 2 次元弦を数本だけ用いて音楽を生み出すという概念は,(僕が日本文化の中心概念だと考えている)禅の意識に近くて,日本を示す上で最適なんだと思います。もちろん元々は中国なんですが。

あと,会場の片隅で金魚が優雅に泳いでいて,趣がありました。(中国の金魚だと思いますけど。)

というわけで日本を紹介しようと思ったらどうするかをしばらく考えていました。やはり中心には禅があって,伝統料理としての寿司・天ぷら・湯豆腐,伝統文化としての茶道・水墨画・書道・太鼓,あたりがその文脈で話せるんでしょう。当然中国文化とほぼ重なります。その背後には着物・忍者・侍・畳・木造建築なんかがおかれ,あるいはその発展系として,現代料理のラーメンや二郎,現代文化のアニメ・漫画(同人誌)・コスプレ・非性交性性風俗があり,そこまで紹介すればほぼ十分なのでしょう。ことに Italia に関して言えば,食文化について日本と類似性があって,小麦粉と油とチーズを中心にやっていく pasta や pizza の展開範囲の広さを考えると,そこには禅の精神があって,それはつまり小麦粉と素材と油だけでやっていく天ぷらや魚と米と酢だけでやっていく寿司みたいな概念なんだと思います。と書くとよく伝わらないのでしょうが,これらを,香辛料の重ね合わせで味を表現する中東料理や,roux・fonds の基底上にあるいは醬を被覆として味を積み重ねる France・中国の料理と比較すると,類型的な一致があると言えると思います。もちろん Italia の料理にも brodo の概念はあって,これは日本料理にある出汁の概念で,それはこの文脈からは外れて roux に近づくんですが。

もちろん casual な展示会ではこれらを具体的に表現しないといけなくて,とすると太鼓というのは最適に見えます。本当は,本物の立ち食い寿司だとか,ちゃんとした茶道だとかを体験できると良いんですけど,Italia で素材と人材を用意するのは難しそうですね。

あとは着物とか刀剣・忍具なんかも展示してあったんですけど,やっぱり着物は美人が着ないとダメだなあというのが正直な印象で,多分それは造形というよりは振る舞いの問題で,和服を着たからには現代の時間からは外れてゆったりとした振る舞いを貫かないと,着物の美というのがまったく見えない,ということに気づいて,ちょっと残念でした。もしかしたら,これまで和服姿を見たのがだいたい優美な人ばかりだったので,その落差なのかもしれません。というか,実際のところその裏側には「仕事」は存在するんですけど,そういった忙しなさを裏に隠して,あるいは忍んで,少なくとも外形的には優美な振る舞いを貫く,というのが本質であると思います。

そういえば เมืองไทย あたりでは massage の体験をやっていて,それは明らかに最高そうだったので,類似なものが日本にあると良いなあと思ったんですけど,鍼灸は良さが即時的に見えないので少し残念ですね。


で 9 日の土曜日は bolognese を作りました。人生初の月桂樹 (laurier) であり,あるいは人生初の生 pasta です。詳細はあっちに書いてます。うちから数分歩いたところにある広場には古くからありそうな市場があって,なんか 13 世紀からあるらしい建物の軒下?には小さな店が並んでいて,一方で広場にはどこかから車でやってくる八百屋があったりして,とてもよくて,Italia 暮らしっぽさがあります。

10 日は雪が降りました。ישראל では雪は降らないので,久しぶりの雪でした。と思ったけどそういえば 1 月に CERN に行ったときも雪でした。 同僚と Pizzeria で忘年会的なやつをやったあと,雪にちなんで gelato を食べに行きましたが,寒いのはよくないです。


そんであいかわらず ישראל からの荷物は届きません。そもそも「送ったものが届く」いうのは異常なことなので仕方が無いのですが,12 日に問い合わせた荷物が 15 日に ישראל に送り返される,みたいな話ですので,基本的に世の中というのは信頼してはいけないのだということです。

その荷物に関わる処理や,保険関係の処理,あとは活動量計 (vivoactive HR) とか food processor (trittatutto) の受け取りとかをしてたら一週間が過ぎていきました。

近所の osteria にもだいたい週一ぐらいで行くようにしていて,そこで飲んだ wine が甘くて美味しかった。Fanta 感覚でお菓子と一緒に飲んでいます。そのくせ 1 本 800 円とかなので最高です。近郊で作っているらしいので,行ってみようと思います。

「行ってみよう」ということで自転車も買いました。中古の road bike で,人生初の road bike なのでちょっと緊張しています。


その自転車なんですけど,本来は(日曜日に)近郊の街に行ってそこで受け取るつもりでした。

正午に駅に向かったのですが,なんとストライキ (sciopero) で昼の電車が運休しており,次の電車が 4 時間後だと言われました。Sciopero するのはいいけどどうせおまえら普段もちゃんと働いてないだろ,みたいな偏見を持っちゃうのはこの 3 ヶ月の経験からです。ここでは過半の人間は本当のことを言わない(というか本当のことを知らないので適当なことを言う)ので,大変です。

ということで夕方に駅に向かうと,その電車も sciopero の対象らしく,じゃあ最初からそう言ってくれ,ということで先述の偏見はどうやら偏見ではなさそうです。

で結局その売り手がいい人で, Padova まで車で持ってきてくれました。もちろん英語はしゃべれないので Italiano で待ち合わせ場所をやっていくんですが,まあ大変でした。結局その日は 13 km ぐらい歩きました。


そこまではまあよかったんですけど,その日(夕方 2 本目の電車に乗ろうと)外出するときに「家の鍵」を忘れてしまい,閉め出されてしまいました。「予備の鍵」もあって,それは予備なので大学に置いていたのですが,うっかりその「予備の鍵」を入手するのに必要な「大学の戸棚の鍵」まで家の中に置いてきてしまい,つまり家の中に入れないということで完全に詰んでしまい,大学で徹夜で仕事してました。大学があってよかったですね。

で,まあ夜を明かして朝に大家さんに連絡しようかと思ってたんですが,現代には Internet があって,調べると鍵の picking の方法が動画で紹介されています。それを熱心に勉強して,たまたま手元に paper clip があったのでそれを曲げたりして道具を作って,「大学の戸棚の錠」を picking しようと試みたところ,2 時間ぐらいで成功しました。午前 6 時とかですね。Internet の偉大さを実感しました。記念すべき人生初 picking です。


海外生活には鍵を picking する技術が必要,というのが最近の教訓です。


そういえば書き忘れたことに,先週 ישראל の銀行に預けていたお金が無事に送金されたので,お金持ちになった。どうやら FAX の相性(?)が悪かった(?)らしく,別の FAX から送って 2 営業日後にやってくれたので,やはり ישראל の人間は信頼できる気がする。(しかし ישראל の「システム」はあまり信頼できない。Italia とは真逆である。)